1月1日~12月31日の期間の事業所得を確定申告を行い、所得税(及び復興特別所得税)を翌年3月15日までに税務署に申告及び納税します。
確定申告の際には、確定申告用の様式が税務署に用意されています。(※.下記リンク先は平成29年度の様式です。)
個人事業主の場合には、「確定申告書B」を利用します。
「確定申告書B」を表記する前提として、1年間の事業収入、売上原価、必要経費などの帳簿が用意されている事です。
帳簿は各年度対応の確定申告用のソフトウェア(青色申告、白色申告用の会計ソフト)を購入した方が管理がしやすいです。
帳簿の作成は、確定申告の受付時に纏めて対応するものではなく、日々キチンと管理するものです。 日々は厳しくても週末にその週の必要経費の金額をソフトウェアに入力し、領収書も月別に管理します。
帳簿を作成する理由は、確定申告時(青色申告、白色申告)に以下の何れかを作成・提出するためです。
確定申告時に青色申告又は白色申告のどちらで対応すべきかは別途記事を記載したいと思います。
この様式2つを確認して頂けると分かると思いますが、「収入金額」「売上原価」に続いて明記されているのが、経費欄です。
この経費欄には、予め経費を分類分けした項目である勘定科目と空白の勘定科目が存在します。
本記事では、予め用意されている勘定科目の説明とフリーランスエンジニアがその他経費計上できる科目について説明いたします。
青色申告の「所得税青色申決算書(一般用)」及び白色申告時の「収支内訳書(一般用)」に定義された経費について以下の一覧をご確認下さい。
勘定科目 | 説明 |
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給料賃金 | 従業員を雇っている場合の従業員の給料、手当の総額です。 1人で活動しているフリーランスエンジニアには、関係の無い勘定科目です。 |
外注工賃 | 外部の業者に業務の一部を委託した場合、その外注への発注費用 |
減価償却費 | 事業などの業務のために用いられる建物、建物附属設備、機械装置、器具備品、車両運搬具などの資産は、一般的には時の経過等によってその価値が減っていきます。このような資産を減価償却資産といいます。
減価償却資産の取得に要した金額は、取得した時に全額必要経費になるのではなく、その資産の使用可能期間の全期間にわたり分割して必要経費としていくべきものです。この使用可能期間に当たるものとして法定耐用年数が財務省令別表に定められています。(国税庁HPより) フリーランスエンジニアでは、PC機器(サーバー、パソコン、プリンター、通信機器など)がこれに該当します。ポイントとしましては、単一で10万円未満の機器は「消耗品」として減価償却費の対象とはなりません。10万円を超える機器が減価償却費の対象となり、使用年数に応じた按分で経費(減価償却費)を計上します。 |
貸倒金 | 売掛金や未収入金、貸付金、前渡金など(以下「貸金等」といいます。)について、得意先の資産の状況や支払能力などからみて、その貸金等の全額が回収できないことが明らかになった場合など一定の事情が生じたときには、その回収できない金額などが貸倒金として必要経費になります。 フリーランスエンジニアでは、発生するケースとしては大変稀なケースです。ブラックな企業又は取引先の倒産などが発生で売掛金が回収できないケースです。 |
地代家賃 | 地代家賃は店舗や事務所の家賃、月極駐車場の使用料 現場で作業していて、事務所を自宅としてるフリーランスエンジニアの場合には、家賃のうち事業所として利用して按分された費用が経費として認められます。 按分の比率には、按分の根拠となる事業所の面積、利用時間などの根拠が必要です。 |
利子割引料 | 事業のために借入した場合に利息として支払う金利手数料を意味します。 1人のフリーランスエンジニアでは発生し難い勘定科目です。 |
租税公課 | 「租税」は国税や地方税。「公課」は地方公共団体より課せられた賦課金や罰金などを表します。 事業税、固定資産税、自動車税、不動産取得税、登録免許税、印紙税などの税金や商工会議所、商工会、協同組合、同業者組合、商店会などの会費、組合費又は賦課金。 フリーランスエンジニアでは「個人事業税」や「固定資産税」がこれに該当します。 気をつけるのは、「所得税」「住民税」は経費に該当しないということです。 |
荷造運賃 | 事業主が販売・発送した商品に掛かった運送費、梱包資材など。 段ボールや小包みなどは「荷造運賃」になりますが、封書を利用して郵送する場合には「通信費」になります。 |
水道光熱費 | 事業で利用した電気代、ガス代、水道代。 自宅を事業所としているフリーランスエンジニアの場合には、按分して計上します。 按分比率は、電気代の場合には利用時間、コンセントの数など具体的な根拠が必要なります。 |
旅費交通費 | 取引先、現場への移動で発生する電車代、バス代、タクシー代、定期代など。 フリーランスエンジニアの場合には、交通系のICカードを利用する管理がしやすいです。 毎月最低1回駅で明細を印字します。ポイントとしては、交通費で利用に専念させ、 コンビニなどの支払い時に利用しない事です。 また、移動が多い方は交通費の発生事由を忘れる前に小まめに整理しておきます。 |
通信費 | 事業で使う携帯代、固定回線代、封書などの郵送料金。 自宅を事業所としているフリーランスエンジニアの場合には、按分して計上します。 スマホは、事業用とプライベート用と分けて2台持ちしている方も結構いらっしゃいます。 |
広告宣伝費 | 事業の広告で利用する宣伝に掛かる費用。 フリーランスエンジニアの場合には、例えば自サイトのインターネット広告などがこれに該当します。 名刺やpptで取引先へのプレゼン資料に掛かる印刷代などは消耗品に該当します。 |
接待交際費 | 事業に関係する取引先(見込みを含む)への接待や贈り物などに支払う費用。 フリーランスエンジニアの場合に多いケースは、現場や関係者との飲み会や食事会です。 ポイントとしては、必ず領収書をもらい、裏面に相手と目的をメモし、 プライベートの飲食代と経費をキチンと分ける事です。 |
損害保険料 | 事業所の火災保険料、事業で利用する自動車の損害保険料。 気を付けるのは事業主の生命保険、年金、共済掛金などは経費に該当せず所得控除となります。 |
修繕費 | 店舗、自動車、機械、器具備品などの修理代。 フリーランスエンジニアの場合に多いケースは、自分用(事業用)のPC、ノートパソコンの故障時の修繕費だと思います。 故障時に業者に出して請求された修理費と部品代がこの科目に該当します。 マウス、キーボード、プリンターインクなど備品の買い替えなどは消耗品費に該当します。 |
消耗品費 | ①帳簿、文房具、用紙、包装紙、ガソリンなどの消耗品購入費、 ②使用可能期間が1年未満か取得価額が10万円未満の什器備品の購入費 |
福利厚生費 | ①従業員の慰安、医療、衛生、保健などのために事業主が支出した費用、 ②事業主が負担すべき従業員の健康保険、厚生年金、雇用保険などの保険料や掛金雑費 ポイントとしては、従業員のための経費であり事業主自身の健康保険、年金などは該当しません。 |
雑費 | 事業上の費用で他の経費に当てはまらない経費 |
新聞図書費 | 所得税青色申告決算書、収支内訳書には上記固定で記載されている勘定科目の他に空白行があり事業に必要な経費の科目を計上できるようになっています。 フリラーンスエンジニアで計上する可能性が高い勘定科目は、新聞図書費です。 現場で使う参考文献、スキルアップのための技術書籍がこれに該当します。 |
研修費 | 所得税青色申告決算書、収支内訳書には上記固定で記載されている勘定科目の他に空白行があり事業に必要な経費の科目を計上できるようになっています。 フリラーンスエンジニアで計上する可能性がある勘定科目の1です。 外部セミナーの参加費用を計上します。 |
サラリーマン時代では、全ての控除を源泉徴収された後に手取りの給料が入金されます。 そのため、仕事に必要な技術書籍、PC機器などの購入に関して生活を鑑みて中々手をだせずにいた事もあると思います。 フリーランスになる1つのメリットとしては、売上と法律に定義された範囲で自分の采配で事業に関わる経費を使用できる点です。 その結果として、事業に必要な経費を有効活用すれば、フリーランスエンジニアにおける市場価値を高め、事業の継続と拡大を目指す事が可能です。
経費の管理は、日々、週次、月次の管理がとても大切です。会計ソフトに日々の経費を入力し、仕訳を行い現金と領収書の管理を行います。
自宅を事業所としているフリ-ランスエンジニアとして重要な点は、「私事」と「経費」をキチンと分ける事です。 その上でその経費の正当性を証明するために、「5W-1H」に基づいてWhen(いつ) Where(どこで) Who(誰が、誰と)What(何を)Why(何のために)どのように(How)をおさえておくことです。
各支払時に領収書の裏に忘れる前にメモを取るだけでも全然違います。
経費は上記のように事業を運営するにあたりフリーランスエンジニアのメリットの1つですが、気を付けなければならないのが サラリーマン時代とは異なり入金額が控除対象が全て引かれていない状態から開始している点です。
経費は事業を継続、運営するために必要な支払であり、節税のために使う事が目的ではありません。 これをはき違えると気付かない内に知らないうちに「浪費家」になってしまい、事業としては優先度が低い経費を支出したり、 健康保険、年金、住民税、所得税、個人事業税などの支払いをしなければならない支払時に現金が回らなくなっては本末転倒です。
重要な事は、自分のエンジニアとして現場で必要な緊急性の高い経費は意地でも捻出し、 更に将来のエンジニアとしての価値を高める即ち自分の事業の継続及び発展に繋がる経費(例えば技術書籍、セミナー、自研究用機器など)に関しても他の内容以上に優先させて良いと思います。 逆に使う事が目的になっている場合には、その必要性と優先度を見直すべきです。
経理処理や確定申告処理が慣れないフリーランス1年目の場合には、税理士に依頼して年間を通して経費の計上に問題無いか月1でチェックするのが良いでしょう。